基本情報技術者試験は2023年度から制度が大きく変わります。2020年12月からCBT(Computer Based Testing)方式による試験が開始され、2023年4月から通年試験化となります。
本記事では基本情報技術者試験の旧制度と新制度の違いをまとめました。
試験・資格概要
基本情報技術者試験(FE:Fundamental Information Technology Engineer Examination)は、情報処理の促進に関する法律第29条第1項に基づき経済産業大臣が行う国家試験です。IT業界のなかでも定番の資格となっています。
基本情報技術者試験はITエンジニアの登竜門として位置づけられています。合格者は履歴書等に「基本情報技術者試験 合格」と記載することで、ITの基礎知識やスキルが身についていることをアピールすることが可能です。
新制度の対象者像は「ITを活用したサービス、製品、システム及びソフトウェアを作る人材に必要な基本的知識・技能をもち、実践的な活用能力を身に付けた者」となっています。
共通キャリア・スキルフレームワークの5人材像(ストラテジスト、システムアーキテクト、サービスマネージャ、プロジェ クトマネージャ、テクニカルスペシャリスト)レベル2に相当します。
レベル | 定義 |
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レベル 4 | 高度な知識・スキルを有し、プロフェッショナルとして業務を遂行でき,経験や実績に基づいて作業指示ができる。また、プロフェッショナルとして求められる経験を形式知化し、後進育成に応用できる。 |
レベル 3 | 応用的知識・スキルを有し、要求された作業について全て独力で遂行できる。 |
レベル 2 | 基本的知識・スキルを有し、一定程度の難易度又は要求された作業について、その一部を独力で遂行できる。 |
レベル 1 | 情報技術に携わる者に必要な最低限の基礎的知識を有し、要求された作業について、指導を受けて遂行できる。 |
2023年度変更点
実施方式・採点方式
旧制度の試験は年2回実施されていました。新制度の試験では、通年で実施され、受験者の好きな日時に受けることができます。
旧制度では、問題ごとに固定的な配点で採点されていました。新制度では、IRT(項目応答理論)に基づく方式で採点されます。
IRTとは、項目(各設問)に対する受験者の応答(正解or不正解)のデータを見ることで、その設問の難易度、適切さを判別し、受験者の能力を正しく評価するという考え方です。つまり、受験した日の問題の内容が異なっていても不公平にならないように採点されます。
旧制度、新制度ともに、正答率60%以上で合格となります。
旧制度 | 新制度 |
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・年2回実施 ・問題ごとに決まられた配点で採点 ・午前試験・午後試験ともに100点満点 両方が60点以上で合格 | ・通年実施 ・IRTに基づく方式で採点 ・科目A試験・科目B試験ともに1000点満点 両方が600点以上で合格 |
出題形式
旧制度では、試験が午前試験・午後試験に分けられていましたが、新制度では、科目A試験・科目B試験に分けられています。午前試験と科目A試験は同様の内容ですが、科目A試験では問題数が少なく、試験時間も短くなりました。
一方、午後試験と科目B試験は全く異なる内容です。午後試験では数ページに及ぶ長い問題で、選択問題でした。科目B試験では1ページほどの問題で、選択問題はありません。
旧制度 | 新制度 |
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午前試験 試験時間:150分 出題数:80問 解答数:80問 午後試験(’20~’22年度) 試験時間:150分 出題数:11問 解答数:5問(選択問題あり) | 科目A試験 試験時間:90分 出題数:60問 解答数:60問 科目B試験 試験時間:100分 出題数:20問 解答数:20問(選択問題なし) |
出題範囲
旧制度の午前試験は、テクノロジ系から50問、マネジメント系から10問、ストラテジ系から20問が出題されました。新制度の科目A試験は、問題数が減少しましたが、旧制度の午前試験に準じた内容になっています。分野ごとの問題数の割合は明らかになっていませんが、旧制度の午前試験と大きな変更はないと思われます。
旧制度 | 新制度 |
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午前試験(80問) テクノロジ系:50問 マネジメント系:10問 ストラテジ系:20問 | 科目A試験(60問) 午前試験に準じた内容 |
旧制度の午後試験は、テクノロジ系、マネジメント系、ストラテジ系、データ構造及びアルゴリズム、ソフトウェア開発の分野から出題され、選択問題もありました。新制度の科目B試験は、アルゴリズム、プログラミング、情報セキュリティの分野から出題され、選択問題はありません。出題数は、アルゴリズムとプログラミングが16問、情報セキュリティが4問です。
旧制度の午後試験では、実際のプログラミング言語で記述したプログラムを読み取るソフトウェア開発の問題がありましたが、新制度の科目B試験にはありません。新制度では、プログラミング言語は疑似言語で出題されます。
疑似言語は、試験オリジナルの架空のプログラミング言語です。疑似言語の記述形式は、C言語やJavaと似ていますが、同一ではありません。
旧制度 | 新制度 |
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午後試験(’20~’22年度) 情報セキュリティ:1問 テクノロジ系(選択):3問 マネジメント系、ストラテジ系(選択):1問 データ構造、アルゴリズム:1問 ソフトウェア開発(言語は選択):5問 言語:C、Java、Python、アセンブラ、表計算ソフト | 科目B試験 アルゴリズム、プログラミング:16問 情報セキュリティ:4問 言語:疑似言語 |
まとめ
2023年度から始まる新制度では、いつでも受験でき、問題数が減り、プログラミング言語の問題がなくなりました。旧制度と比べると、受験しやすくなった印象です。
試験対策の際は、旧制度の午後試験と新制度の科目B試験では内容が全く異なるため、注意が必要です。